「膝の痛みに杖を検討している」という方はいらっしゃいませんか?
杖は上手に使うことで、膝にかかる体重の何割かをカットしてくれる効果が期待できます。
自分に合った杖を選び正しく使うことで、つらい膝の痛みが軽減されるかもしれません。
膝の痛みに杖はどのくらい有効なの?
”杖”と聞くと、見た目や年齢の問題から、少し抵抗がある方がほとんどかと思います。
もちろんそのお気持ちもわかりますが、万一の時の為に、”膝の痛みに対する杖の有効性”からまとめさせていただきます。
一般的に歩行時には、体重の3倍の負荷が膝にかかっているといわれています。
体重が60kgの場合、180kgの負荷が膝にかかるということですね。
※この3倍というのは、かかとで着地するときの勢いや、床から跳ね返る力を合算しで出された数値です。
この負荷は、杖をつくことである程度軽減させることができます。
- 一般的なT字杖の場合:体重の20~25%をカット
- 多脚杖(四点杖)の場合:体重の30%をカット
- 片方に松葉杖をついた場合:体重の2/3をカット
仮に60kgの方がT字杖を使用して歩いた場合、通常180kgかかる負荷を最大135kgにまで抑えられるということになります。
⇒45kgも負担を軽減できるというのは、かなり大きいのではないでしょうか?
・杖なし⇒180kg
・T字杖⇒135kg その差は45kg。
膝の痛みは、一定期間適切な対応をすることで治まるケースがほとんどです。
それより問題なのは、痛みをかばいながら崩れた姿勢で歩き続けた結果、それが定着してしまうこと。
サポーターと同じように、『痛みがひどい時だけ頼る』という使い方を検討してみるのも1つかと思います。
ただ、それぞれの杖にはメリットとデメリットもあります。
自分に合った杖を選ぶために、以下に詳細をまとめさせていただきました。
膝の痛みにお勧めの杖の種類:自分に合うのはどんなタイプ?
杖によっては”クセ”があるものもあります。
選ぶ際は、以下のメリット・デメリットを参考にしてください。
T字杖のメリット・デメリット
【T字杖のメリット】
- 歩行を邪魔しない
- 持ち運びが便利
- 軽量でデザインも多く、女性向き
【T字杖のデメリット】
- 安定性に欠けるため、ふらつきが強い方には不向き
- 体重のカット割合が少ない
T字杖の一番の特徴は、”歩行を邪魔しない”ということです。
ある程度動けている方の場合、杖を目的とした杖だと逆にスムーズに歩けなくなってしまいます。
痛みがまだ弱く、歩行の補助的な手段として杖を検討されている方は、T字杖で十分対応が可能です。
多脚杖(四点杖・三点杖)のメリット・デメリット
【多脚杖のメリット】
- 安定している
- どこでも立てられる
【多脚杖のデメリット】
- 動けている方にとっては、歩行を邪魔してしまう
- 不整地での使用には向いていない
多脚杖は、杖の足が多いので安定していることが特徴です。
しかし、杖の足を全部つかないと安定性が得られないため、どうしてもスピードが遅くなってしまいます。ある程度動ける方にとっては、煩わしく感じてしまうかもしれません。
痛みが強く、何かにつかまっていなければ歩けないような場合には、とても頼りになる杖です。
ロフストランド杖のメリット・デメリット
ロフストランド杖とは、前腕で支持ができるカフが付いたタイプの杖です。
【ロフストランド杖のメリット】
- 握力が弱い方でもしっかり踏ん張れる
- 手に変形があっても負担が少ない
- 前腕からもたれることができるので、体重をしっかり預けられる
【ロフストランド杖のデメリット】
- 大きい為、かさばる
- もたれて歩く癖がつく可能性がある
ロフストランド杖は、手以外に前腕でも体重を支えられるようになっています。
その為、膝への負担を軽減する機能は、他のタイプよりも優秀といえます。
しかし、大きさがある為かさばったり、”もたれた歩き方が癖になってしまう”こともあるので、注意が必要です。
基本的に、T字以外はクセがあるものが多いので、医療機関などで医師や理学療法士に相談してから決めるのが良いかと思います。
杖の使い方は、基本的にはどれも一緒です。
次はT字杖を例に、調節の仕方から使い方までを確認していきましょう。
膝の痛み軽減のために:T字杖の調節の仕方・持ち方・使い方(歩き方)
T字杖の使い方について、まとめていきます。
T字杖の調節の仕方
杖の高さを決める目安は、3パターンあります。
①身長の半分に2~3cmを足した長さに、グリップを合わせる
(160cmの方の場合は82~83㎝の長さ)
②骨盤のやや下にある”大転子(だいてんし)”という骨の出っ張りに、グリップを合わせる
※丁度、この方の手首辺りです。
③杖を足先20cmの所につき、肘を30度曲げた位置にグリップを合わせる
この腕の位置が、一番踏ん張れる場所とされています。
どの調節の仕方でもほぼ同じ長さになるため、わかりやすい方法を選んでみてください。
T字杖の持ち方
杖は、痛みがある膝と反対の手に持ちます。
また杖には前後があり、グリップの短い方が前、長い方が後ろです。
握り方は、短い方を人差し指と親指の2本で握り、長い方は残りの3本の指で握ります。
たまに前後反対で握っていたり、グリップの長い方だけを握っていることもあるので、注意してください。
T字杖の使い方(歩き方)
杖を使った歩き方には、2動作と3動作といわれるものがあります。
2動作歩行は、普通に歩くように1・2・1・2・・・のリズムで歩きます。
例えば左膝が痛む場合は右手に杖を持ち、左足を出した時に右手の杖をつくようにします。
3動作歩行は1・2・3・1・2・3・・・のリズムで歩きます。
最初に杖を出し、次に痛みのある足、最後に痛みのない足を出すという順番になります。
痛みがそれほど強くない方は2動作、痛みが強くゆっくりでしか歩けない方の場合は、3動作で歩くようにするのが良いかと思います。
杖には、体重による負担をカットしてくれる作用がありますが、それは正しく使った場合に限ります。
- 杖の高さ
- 握り方
- 痛くないほうの手に持つ
- 負担の少ないリズムでの歩き方
この4つに気を付けながら、使うようにしてください。
※補足※
杖の先端のゴムは、使っていくうちに劣化していきます。
だんだん滑るようになってくるので、溝がなくなってきたら交換することをお勧めします。200~300円で販売されているので、杖を購入した際の販売元に連絡してみてください。
また、ものによっては故障していたり、ぐらつきが気になる事もあります。
保証体制が整ったメーカーのものを選ぶと良いでしょう。
歩行以外の場面で杖を使う場合の注意点
最後に、歩行以外で杖を使う際の注意点などをまとめておきます。
階段の昇り降りの時、杖はどうするの?
階段の昇り降りの際は、手すりがあれば手すりを利用しましょう。
【昇るときの手順】
①手を前に出す
②痛くないほうの足を上の段に上げる
③痛い方の足を上の段に揃える
【降りる時の手順】
①手を前に出す
②痛い方の足を下におろす
③痛くないほうの足を下の段に揃える
この方法が基本になります。
手すりがなく、どうしても杖を使用する際は・・・
【昇るときの手順】
①痛くないほうの足を上の段に上げる
②杖と痛みのある足を上の段に揃える
【降りる時の手順】
①痛い方の足を下におろす
②痛くないほうの足を下の段に揃える
この手順で昇り降りをすることで、膝への負担を抑えられます。
旅行によく出かける方向けの杖について
T字杖の中には、折りたためるタイプのものもあります。
カバンに入る大きさにまでたためるので、検討してみるのも1つです。
登山における杖の重要性
膝は不安定な関節なので、特に下山の際には関節に”ズレ”が生じやすくなります。
関節にズレが生じると、周りの組織が傷ついて炎症を起こしたり、筋肉が防御的にこっわばって膝裏の痛みを生むこともあります。
ブレーキ代わりに、ステッキなどの杖をつくことをお勧めします。
杖をプレゼントする際に考慮したい事
家族に、杖のプレゼントを検討している方もいらっしゃるかもしれません。
杖にはいろいろな種類があり、また本人に合わせて高さなどを調節する必要があるため、購入の際は、できればご本人に同伴していただくのが良いかと思います。
また通販で購入する際は、杖の高さを身長から計算しておいて、その範囲に調節が可能なものかを確かめてから購入することをお勧めします。
まとめ:膝の痛みと杖について
膝の痛みは、「これ以上負担がかかると関節が壊れてしまう」という体からのサインでもあります。
筋トレやストレッチなど、適切に対処することで症状が軽減してくことがほとんどですが、それにはある程度の期間がかかります。
”つらい時期だけでも杖に頼る”ということを、検討してみてはいかがでしょうか。
我慢し続けた結果変形が起きてしまったり、膝をかばった歩き方がクセになって腰痛などを発症してしまう可能性もゼロではないので・・・。
この記事が、膝の痛みに悩み杖を検討されている方の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※当てはまる症状があれば、こちらも参考にしてください。
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