膝痛対策でハムストリングスのストレッチは危険?ケアの本質を知ろう

膝痛がある場合、

ハムストリングスを鍛えると良い」

ストレッチで緩めると良い」

そんな声をよく効くかと思います。

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確かに鍛えたり伸ばしたりすることで、一定の効果があることもあります。

しかし、なぜ固くなってしまうのかなぜ筋力低下が起きているのか、そこを知っておかないと、時には膝の痛みを悪化させてしまうケースもあるんです。

ここでは理学療法士の視点から、ハムストリングスという筋肉の本質に注目し、本当の意味で膝の痛みを軽減していくための知識について、まとめさせていただきました。

※ポイント※

ハムストリングスは単に力を出す筋肉ではなく、膝が壊れないように守ってくれる大切な筋肉です。固くなるのは、もしかしたら膝関節の不安定さを補うための防御反応かもしれません。

膝痛ケアのためにハムストリングスを強化しなさい!伸ばしなさい!←少しだけ疑問があります

膝に痛みに有効な筋トレやストレッチとして、ハムストリングスが対象になることは多いです。

一般的に言われていることは、以下のような内容です。

  • ハムストリングスは膝の安定に関わっているから、鍛えたほうが良い
  • ハムストリングスが固くなると膝の動きが悪くなるから、ストレッチした方が良い

なんとなく聞けば「そうなんだ」と納得してしまいますが・・・

ちょっと単純すぎる気がしませんか?

漠然と筋トレやストレッチをして、良くなった経験がありますか?

ハムストリングスの本質は、もっと深い場所にあります。

少し掘り下げてみましょう。

膝痛ケアのために:ハムストリングスの本質を考えてみる

ハムストリングスの膝の安定性に関わる働きについて、まとめていきます。

ハムストリングスの膝の安定性に関わる作用について

膝関節は大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)から構成されていて、股関節のように骨と骨ががっちり噛み合っているわけではなく、面と面が接しているだけの不安定な関節です

※お皿の骨も膝関節に含みます。

IMG 4306 e1527749896619 300x400 - 膝痛対策でハムストリングスのストレッチは危険?ケアの本質を知ろう引用元:ネッター解剖学アトラス(原著第3版)P.472 株式会社南光堂 著者:Frank H.Netter

このように面と面が接しているだけの関節なので、歩いたり階段などの動作の際には当然”ズレ”が生じやすくなります。

ハムストリングスは脛骨という下側の骨の後ろに付着していて、脛骨が前方にズレないように引き止めておく作用を担っています

この”膝のズレを防ぐ”という作用が、ハムストリングスの固さや筋力低下と深くかかわってくるんです。

ハムストリングスの固さ・筋力低下は膝を守るための防御反応

痛みを抱えている方の多くは、膝の安定性が低下していることがよくみられます。
そして、安定性が低下しているということは、”ズレやすい状態”とも言い換えることができます。

そこで体はどういう反応をとるかというと、関節を守るためにハムストリングスを固めるようになるんです

※膝がこれ以上ズレないように、ハムストリングスを固めることで関節を守ろうとする。

関節の中にある半月板や周りの靭帯には、関節の異常を感じとるセンサーが存在し、ズレを感知すると周りの筋肉に「関節を守りなさい!」と指令を出します。

この反応を受けて真っ先に働くのが、ハムストリングスということなんですね。

こわばることで力も十分発揮できなくなり、ハムストリングスの筋力低下も起きてしまいます。

関節を守ってくれているハムストリングスを無理やり緩めてしまうのは、少し危険な気がしませんか?

緩めすぎた結果、次第に関節そのものが壊れていき、”変形”へと発展していく可能性もあるんです。


ハムストリングスは膝の安定性に関わっている

これは紛れもない事実です。

しかし、やみくもにストレッチをしても関節の不安定さを増してしまう可能性もありますし、筋トレをしても、こわばった筋肉にさらに負担をかけるだけになってしまいます。

では膝の痛みがある場合は、何をすべきなのか・・・。

それは、

膝の安定性を向上させ、ハムストリングスが固くならなくても済む状態を作る
その上で、より膝のズレを防ぐことができるようハムストリングスを鍛えていく

この手順を踏むことが大切になります。

膝がズレにくい状態を作れば、自然とハムストリングスは緩んでいきます。
そこからハムストリングスを鍛えて安定性を向上させれば、膝の痛みを効果的に防ぐ事が期待できます。

『膝が痛いからシンプルにそこを鍛える・ストレッチする』

とても単純で理解しやすい考え方ですが、本質はそこには無いんです。

次は実際に、不安定さからくる膝の痛みのケアを例に挙げながら、ハムストリングスを安全に効果的に鍛える方法までをまとめてみたいと思います。

膝の安定性を向上させ、ハムストリングスを本当の意味で鍛えるには

ハムストリングスを上手に使って、膝の安定性を向上させるために・・・

実際のケア手順を紹介させていただきます。

体幹での重心移動を獲得する

歩行を始め、動作時の重心移動の9割以上を股関節・体幹が行っています。

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(足が重心移動をしているわけではないんです)

膝に痛みを抱えている方の多くは、この股関節と体幹が固くなっていて、足での体重移動を余儀なくされていることが多くみられます。

その結果膝への負担も大きくなるので、まずは体幹と股関節でしっかり重心移動を行えるようにしていきましょう。

体幹の柔軟性を改善

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体の脇の固さは、左右の重心移動と関係してきます。
呼吸を止めないようにしながら、30秒を目安に伸ばしていきましょう。

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曲げ伸ばし方向の動きも、しっかり出しておきます。
大きくゆっくり動かしておきましょう。

実際に体幹・股関節での重心移動を練習する

実際に、重心移動の練習もしておきましょう。

・フローリングや畳に、足を伸ばして座ります。

・そのまま左右のお尻に体重を移しながら、おしり歩きをします。

・数メートル前進・後退を繰り返しましょう。

・足が使えない分、嫌でも体幹での重心移動を促すことができます。

股関節・足関節の柔軟性向上を目指す

股関節と足関節は、膝関節の上下にある関節です。
屈伸運動しかできない膝に比べ、クルクルといろいろな方向に動かすことができます。

その為、股関節や足関節が固くなってしまうと、膝関節にその動きが要求されるようになります。

膝に余計な仕事を増やさないように、しっかりと柔軟性を確保しておきましょう。

股関節のストレッチ

股関節の前側のストレッチ

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この姿勢で30秒ほど保ちます。
太ももの前をしっかり伸ばしておきましょう。

膝のストレッチにもなりますが、股関節の前の筋肉もしっかりと伸ばすことができます。

股関節を広く使うためのストレッチ

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このように、しっかりを股関節を開けるようにしておくことも大切です。

この時、膝が内側に入ってしまうことが良くあります。両肘で膝をグッと外に押し出しておくと、股関節をしっかり広げることができます。

30秒を目安に、膝の痛みと相談しながら行ってみてください。

痛みがある方は、ここまで深く膝を曲げなくてもOKです。
開きたいはあくまで股関節なので、下がることよりも開くことを意識してみてください。

足関節のストレッチ

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単純ですが、アキレス腱伸ばしが効果的です。
30秒を目安に、しっかりと伸ばしておきましょう。

また、足首をくるくる回す運動もお勧めです。

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前回り、後ろ回りで、しっかり動かしておきましょう。

膝の安定性に関わる3つの筋肉を鍛える

最後に、膝そのものの安定性を高めるための筋トレを行っていきましょう。

大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の筋トレ

膝関節の安定性に関わる、代表的な筋肉です。

①足を伸ばして座り、つま先は天井を向けておきます

②膝の下にクッションを入れ、少し曲げた状態にします

③クッションをつぶすように、膝を伸ばす力を入れます

④この時、かかとが浮かないように気を付けて、膝だけを伸ばしていくようにして下さい

⑤5秒こらえて休んでを、10回繰り返します

内転筋(ないてんきん)・大殿筋(だいでんきん)の筋トレ

この2つは大腿骨のコントロールに関わる筋肉で、歩行時の膝の安定性に関わっています。

①あおむけに寝て両膝を曲げます(なるべく深く曲げる)

②膝の間にクッションを挟みます

③その状態からお尻を持ち上げていきます

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④5秒ほど保ちゆっくり下ろす、これを10回繰り返します

お尻を持ち上げた際、お尻の筋肉が固くなっていればOKです


  • 体幹・股関節での重心移動
  • 股関節・足関節の柔軟性改善
  • 膝の安定性に関わる筋肉のトレーニング

この3つを行い、膝に無理がかからない状況を作り出しておいてから、実際にハムストリングスのストレッチと筋トレを行っていきます。

ハムストリングスのストレッチと筋力訓練

ここまで来て、ようやくハムストリングスを緩めても大丈夫な環境が整います。

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このようにしっかりと膝裏を伸ばしていきましょう。

この時に、背中を丸めて頭を前に倒すのではなく、胸を膝に近づけるようにしてみてください
また、つま先を上にあげると、ふくらはぎの筋肉も一緒に伸ばすことができます。

心地が良い程度で、30秒を目安に伸ばしてみてください。

次は筋トレです。

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先ほどの、アキレス腱伸ばしの姿勢になります。

この状態から、後ろの膝の屈伸運動を行っていきます。

・後ろ足の膝を少し緩めて曲げます。

・今度はギュッと伸ばす力を入れます。

・後ろ足のかかとに柔らかいボールを踏んでいるのをイメージして、そのボールをかかとでつぶすように力を入れていきます。

・5秒ほど力を入れて休憩を、10回繰り返しましょう。

ハムストリングスは膝を曲げる筋肉ですが、足が後ろにある状態では、膝を伸ばす作用に切り替わります

馬のお尻から太ももの裏にかけての筋肉を見ると、ものすごく発達していますよね?
あれは大殿筋とハムストリングスです。
本来ハムストリングスは膝を後ろに蹴り出すための筋肉。
アキレス腱伸ばしの姿勢で、後ろに蹴るように膝を伸ばしてあげることが、効果的な鍛え方といえます。

まとめ:膝痛とハムストリングスについて

ハムストリングスは膝の安定性に関わる筋肉です。
柔軟性や力があればあるに越したことはないですが、ただ鍛えれば良い・伸ばせば良いという単純なものではありません。

なぜ固くなっているのか、なぜ筋力が低下しているのかを考え、まずはハムストリングスが安心して緩むことができる環境を作ることが大切になります

その下準備を経た上で、しっかりと柔軟性を高めたり強化していくことが、本当の意味での安定性向上につながるということになります。

身体は実に奥が深いんです。

納得できた部分があれば、よければ実践してみて下さい。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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